青函連絡船の思い出と我が人生航路 436

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           昭和46年頃に函館山千畳敷から




     縦メタセンター



学校の後輩で弟にあたるエンジニアがおり、近ごろよく電話があり、定年後もたびたび警戒船や、外国へ回航を頼まれ、船の仕事と縁があるようだ。


好不況に左右の海運界では、入社から定年まで一社だけで、海上勤務を続けられるのは珍しかった。本来は求められる姿であり、実践してきたのが、ひそかな誇りのようだった。


エンジンが全てで仕事であり、趣味ともいえる取り組みで、チーフエンジニア(機関長)まで勤め上げた。その分だけ少し世間と乖離もあるが、エンジンのことを聞き、議論する楽しみもある。


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         今年の白雪姫(水不足)



エンジニアは機関の種類や、メーカーに型式など気にかけるようだが、航路の選定や環境は、あまり差が少ないと思われた。



これは通信士にしても、相手の海岸局の違いなどあっても、大きく変わらないだろう。エンジニアや通信士は何処の船であろうが、実務をこなせる力があり、裏返しかも知れなかった。


その点から航海士は、幅広い順応性が求められ、偏った考えでは、ほとんど使いものにならないケースがあった。


青函連絡船のように、同じ航路で毎日ほとんど同じであれば、ほぼ経験だけで航海するのが、特別に難しくなかった。


周遊便で他の港への航海では、オフィサー(航海士)としての基本を、復習しなければならなかった。一般船舶で常にやっていることも、つい縁遠くなっていた。



青函トンネルの開通が、秒読み段階に入り、陸上への配転では、直接に役立たなくても、航海士の本懐を遂げるための、教育も必要と考えていた。他社でも対応できるよう、外航時代の経験を活かせば、難しくなかった。


青函連絡船で普段ドラフト(喫水)をあまり気にせず、いわば出たとこ勝負だった。前に復原性について述べ、ここでは前後の傾きを書く。トリムと言い、前後の喫水の差である。


船には浮面心(C.F. Centre of floatation)と言い、水線面の重心があり、前後の傾きはここを中心に働くことになる。分かり易く言えば船体を、水線で輪切りにしたようなものである。


前より後方が大きく、C.F.も船尾寄りになる。青函連絡船津軽丸型では、船体中央から約3m後方になる。1cmのトリム変化を、生じさせる傾斜モーメントを、毎センチトリム・モーメント(M.T.C)といい、同型船では130前後だったと思う。


タンクの水など(wトン)の移動(dメートル)による、トリムの変化(cm)は、w×dをM.T.Cで割った値になる。例に50トンを60mシフトし、M.T.C.130とすれば、50×60÷130=23cmであり、決まった計算式で前後の喫水を修正する。


積揚げによる場合はトリムだけでなく、船全体の沈下(浮上)が伴う。毎センチ排水トン数(T)と言い、喫水1cmで排水量が、いくら変化するか分かる。青函連絡船(客貨)はドラフト5.0m付近で17.3トンぐらいだった。


約50トン積めば50÷17≒3cm沈み、揚げれば浮くことになる。従って平均沈下(浮上)とトリムを修正することになり、実際にはいろいろあるが、簡略に述べた。


余談になるが旅客1000人が乗ると、一人の体重が60Kg(0.06トン)とすれば、0.06×1000÷17=3.5cmとなり、青函連絡船では人だけでは、びくともしなかった。


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        青函連絡船航海士会誌



これら一般商船では、日常茶飯事であったが、青函連絡船ではあまり触らなかった。オフィサー(航海士)は誰でも知るが、あまりやらないと、ついど忘れする場合がある。個人的には外航時代から、連絡船でも継続していた。


ベテランの大工さん(船匠)は、計算しなくても日ごろの感覚で、分る人もいたようだ。われわれ航海士も、船型が同じなので二種類だけ、覚えればよく対応し易かった。



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この記事へのコメント

mukasinohito
2017年09月13日 20:40
towadamaru7さんが、云われているように、エンジニアと通信士は、基本的に機械や機器が相手だから航路や環境には左右されずに職務を遂行できると思います、航海士は基本的に自然が相手だから航路や環境に適応しないと職務の遂行が難しいでしょうね。
2017年09月14日 15:56
その辺りを分かっていただき、ありがとうございます。
航海士はどうしても少しでも、視野を広くする必要があると思いますね。
本文では一例しか書きませんでしたが、あらゆる勉強が必要と思っていました。
他の会社の船でも、十分やっていけた話も、少しづつ耳にしていました。

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